友情と愛情?

初めてその人に会った日。


外見がとても整っていた。
今時の子が好きそうな顔だなぁとぼんやり、今時のあたしは思った。
笑顔が人懐っこくて、
だけど誰にも笑顔を振りまいて、なんだか気持ち悪かった。
なんだか苦手だった。
きっと、あたしと似ていたから。
だから、お互いに偽りの笑顔で事務的な会話だけを交わしていた。


なぜそうなったのかは覚えてない。
ただの偶然だったと思う。
あたしとその人、そしてその時にはすでに密かにあたしの彼氏であった彼。
この3人が偶然にも同じテーマでグループを組まされて、論文を共同作業していた。
前よりも、3人でいることが増えて、
いつの間にかゼミではいつも3人でいた。
だけど、相変らずあたしはその人が少しだけ苦手だった。


そしてあたしは振られた。
なぜだったのか、少しだけ苦手な彼とメールしていた。
「慰めてあげるよ」と彼は相変らずあたしの嫌いなその完璧な笑顔で言った。
だから、あたしは言ってやった。
ゼミの誰もが知らない、あたしが付き合っていた相手の名前を。


苦手だったのは、たぶんどこか本能的に感じていたから。
完璧な笑顔には裏があるって。
だって、あたしもそうだから。
優しいフリして、本当は冷めていてる。どうでもいいと思っている。


気がついたら、苦手じゃなくなった。
だって、似ているから。
めんどくさいと思っていることも、外面だけいいってことも知っているから。
あたしの機嫌を敏感に感じ取る。
だからその人は、相変らずあたしの嫌いなその完璧な笑顔を浮かべ、
「タバコ吸ってくる」
「行ってくれば?」
「一人で喫煙所行くの寂しいじゃ〜ん♪」
「そこまで言うなら、一緒に行ってあげるよ♪」


「キレそうだったでしょ?」
「だってムカツクから」
「まぁまぁ、落ち着けって♪」
「落ち着いてるよ」
「みんなの前では猫かぶってるからね♪」
「かぶってないよ、女友達の前ではこうだよ」
「じゃあ、男の前でかぶるの?」
「いきなり暴言吐いたら、本気で傷つきそうじゃん」
「確かにね。笑」
「猫かぶってるんじゃなく、気使ってるの」
「またまた〜」
「自分だって猫かぶってくせに」
「一緒にすんなよ」
「顔だけで女の子を騙してるんでしょ?」
「失礼だな。彼女には優しいよ」
「その彼女になんて振られたんだっけ?かまってくれないだっけ?」
「うるさいな。俺は構っていたんだよ」



女友達はこう言った。

「どういう関係?」
「どうって、友達だよ。」
「やけに仲いいじゃん」
「そう?」
「もう付き合っちゃえばいいのに」
「絶対ないね」
「えー」
「友達だよ。」


男と女が一緒にいたら、友情じゃなくて愛情になるのかしら。
いつからそんな定義が通説になったのだろう。


「でも怪しい関係だよね」
「まぁ、疑われてもしょうがないかもね」
「でしょ?電話いっぱいしてるし、お土産も買ってあげるし」


それはタイのお土産返し。
「パンツ買ってきてよ」
「はぁ?」
「熊出没注意って書いてあるやつ」
「なにそれ」
「前に貰ったことあるんだよ」
「持ってるなら、もういいじゃん。キャラメルでいい?」
「はぁ?いらない。てか子供の頃に貰ったからもう履けない」
「なんであたしがパンツ買わなきゃいけないんだよ」
「Mサイズね、よろしく♪」
「大体、怪しくない?彼氏もいないのに、お土産でそんなもの見て」
「あー女友達に怪しまれるね。笑」


明らかに怪しまれたっつの。