ダークです。

何かもから逃げたくて、家中をひっくり返してパスポートを探した。
ここから逃げたくて、携帯が圏外になるようなところへ。
電源を切る勇気もないのに、バカみたい。
だけど、あそこにもあたしの家があって、帰りたかった。


1時間後に見つけたパスポートはあたしの逃げ場なんかじゃなかった。
あたしはいつでもこれに縛られていた。
パスポートに押されているたくさんのスタンプを見て、涙が出た。
そこには再上陸許可、入国許可、そんな無機質な文字が永遠と、
スタンプとして押されていた。
「そんなの身勝手だよ」って泣きながら親にキレたこともあった。
バイリンガルなんて軽々しく言わないでよ。
そんなにカッコいいものなんかじゃない。
国境がなんであるのかも分からなかったんだ。小さい頃。
だけど、目の前にある現実にあたしは小さいながら死にたいと思ったんだ。
だって、誰も助けてはくれないし、だれもあたしの言葉をわからない。
誰にでも普通の生活のように、
ごく普通に大学の例えば法学部になんか入って、周りに友達がいて、
それを築き上げるのに、間違いなくあたしは人の何倍も泣いたんだ。
だけど、誰を責めればいいのか、全然わかんない。
どうすればいいのか、全然わかんない。


だけど、たまに限界なんだ。
逃げたくて、逃げたくて。
親が身勝手なら、あたしも身勝手かもね。
夏休みが終わったら帰るから。
だから行かせて・・・そう言いたかった。
だけど、心配されると思って、言葉を飲み込んでしまった。