どのぐらいの距離?

先生の「4年生と飲みたい」という鶴の一声で、
久々に4年のゼミメンバーが全員集合した。
一体どんな顔すればいいのか分からず、あたしは顔を引きつった。
一体どうすればいいのか分からず、あたしは壁に隠れた。
本当はあの時、泣きそうだった。
今度会うときは笑顔で話かけられそうな気がするよ。
たぶんね。


あたしは今も昔も、
周りから大切にされて、それを糧に生きていく女だから。
そうやって誰かに「かわいいねー」とか「美人だねー」って褒められて、
それがお世辞だとしても、前を向いていく女だから。
だけど、やっぱりふっと思うんだ。
100人に「かわいい」って言われるよりも、あなたに笑顔で「好きだよ」って言われたい。
いつも「結婚するのが怖い」って言ってた君だから、
両親みたいになっちゃうじゃないかって心配していた君だから、
あたしは本当に心の底から、君に幸せな結婚してほしいと思っているよ。
本当だよ。
でも、君に素敵な恋はしてほしくないっていう矛盾な気持ちもあるんだ。
だって、認めたくないから。
大切にされていたその特等席があたしではなく、他の誰かなんて許せない。



「傷つけた俺が聞くのはおかしいと思うけど、ナナ元気にしてる?」



友達に聞いていたことを知ったとき、
あたしはまた泣きそうになった。
なのに、何かすごく重い重い何かが急に軽くなった。
ゼミで繋がっている私達も、
きっと卒業で、別々の道をいくんだね。
たぶん、もうその道は交わらないと思う。
あたしはあなたを忘れたくて、
忘れたくなくて、
誰かに渡すぐらいなら、いっそ殺してしまいたいと
どっかの安い台詞みたいにもがき苦しみ、
一人で立ち上がっていく方法を探している。
だけど、そんなのきっと綺麗事だよ。
だって、買い物にだって行きたいし、バイトだって行かなきゃ、
卒論だって全然進んでいない。
一人暮らしだって待っている。
あたしは社会人になるんだから。